ボッティチェリの甘く清らかな女神@東京都美術館

上野の東京都美術館でボッティチェリ展が始まりました。金曜日、仕事帰りの夫と合流してこの展覧会に行ってきました。

ボッティチェリは、イタリアルネッサンスを代表する巨匠のひとりで、「ヴィーナスの誕生」「プリマヴェーラ」などが代表作です。

botticelliのヴィーナス

出典:http://en.firenze-online.com/

彼の作品の多くは板に描かれたテンペラ画といわれるもので、きわめて繊細であるため、なかなかまとまった数の来日は実現しなかったのですが、今回は、イタリア政府の全面的な協力のもと、世界中からボッティチェリの作品を集めた、かなり強力な大回顧展となっています。

現存するボッティチェリの作品って世界中で100点くらいしかないのですが、そのうちの27点もの作品が集まったっていうのは、コレは大変なことだと思います。

ボッティチェリ展の概要

ボッティチェリ展チラシ

「第1章ボッティチェリの時代のフィレンツェ」から始まります。メディチ家の栄光と没落、それに続くサヴォナローラの登場とフィレンツェの歴史の変化を追うことで、ボッティチェリの画風の変遷が理解できます。

今回の展示は、師のフィリッポ・リッピや、その息子で、ボッティチェリの弟子にもなったフィリピーノ・リッピの名作も数々並び、この3人の関係にも言及しています。時代と背景がよく分かる企画となっていて、ギュッと凝縮された濃密な仕上がりになっています。オススメの展覧会です。

ボッティチェリ展の混雑状況

金曜日は夜間開室していて、20:00までやっています。17:30頃着いたのですが空いていました。ところどころ、人だかりのできている絵もありましたが、少し待てば順番は回ってきます。全体的にゆったり見学することが出来ました。

金曜日の夜はおすすめです。

その他の曜日ですが、チケット買うのに行列したとか、入場制限があったとかは聞かないので、概ね空いている状況ではないでしょうか。

気になっている方はぜひ今のうちに。会期後半になると混むのが定説です。

ボッティチェリが描くラ・ベッラ=美しい人

私は昔、イタリア・ルネサンスって少女漫画ぽくってちょっと苦手だったのですが、それは実物を見たことなかったからで、初めてウフィツィ美術館で「プリマベーラ」と「ヴィーナス」を見た時、衝撃的といえば大げさですが、そこだけ光輝いて迫ってきたのです。

もう30年近くも昔のことなので、周囲の状況とかほとんど記憶に無いのですが、その絵に向かって光と音楽が降り注いでいる感じでした。私はしばらくその場に佇んでいたと思います。実物には確かにパワーというか磁力があります。そういうのをオーラっていうのでしょうか。

シモネッタ・ヴェスプッチ

出典:http://botticelli.jp/

ヴィーナスやプリマベーラに描かれていた美しい人は「シモネッタ・ヴェスプッチ」

フィレンツェ一の美女と謳われた女性です。ジェノヴァの出身で、15歳でフィレンツェのヴェスプッチ家に嫁いで来ました。

ルネサンスの「時代の女神」として表現され、ボッティチェリやレオナルドダ・ヴィンチなど同時代はもちろん、後世の芸術家にもインスピレーションを与えたと言われています。

私はボッティチェリが描く彼女が一番好き。線の詩人が描く髪型や服やアクセサリーの緻密な表現はもちろん見応えあるのですが、惹かれるのは人物の表情。

botticelli 書物の聖母子

出典:http://botticelli.jp/

優美で繊細で、そしてちょっとはかなげで、気品に満ちたその眼差しに強く心が惹かれます。

今回、シモネッタをモデルにした作品が何点か含まれていて、それだけでも私にとっては心躍る展覧会でした。

ボッティチェリとサヴォナローラ

メディチ家が追放されたあと、フィレンツェ市民の熱狂的な支持を得て、フィレンツェの統治をまかされたのが、修道士サヴォナローラです。

彼は贅沢を非難し、神への信仰に基づいた禁欲的で質素な暮らしを人々に強要します。

ボッティチェリもサヴォナローラに酔心していきます。その結果、彼の画風も変化してしまいました。

一般的には彼の絵は精細を欠いた、重苦しい絵になっていまい、評価も下がります。私もそう思っていました。

botticelli聖母子と洗礼者聖ヨハネ

出典:http://botticelli.jp/

晩年のボッティチェリの絵。華やかさは消えてしまったけど、幼い我が子の未来を予感した悲しげな聖母の表情とはうらはらに、画面に沿うように体を屈折した聖母からは静かな決意の力強さを感じます。

つまらなくなったと言われながらも、はっと人を惹きつける構図は流石です。

でも結局ボッティチェリは歴史から忘れられ、再び戻ってくるのは、19世紀のラファエル前派に注目されるまで待たなくてはなりません。

東京都美術館のボッティチェリ展

大御所の名前だけで集客する展覧会とは一線を画し、作品の質も高く、数も多いので、見終わった後は、確実に満足感を得ることが出来ます。

会期:2016年1月16日(土)~ 4月3日(日)
開館時間:9:30 - 17:30(金曜日は20:00まで)※入室は閉室の30分前まで
休館日:月曜日、3月22日(火)※ただし、3月21日(月・休)、28日(月)は開室
料金:一般1600円、大学生1300円、高校生800円。65歳以上1000円。中学生以下無料
会場 :東京都美術館
公式サイトhttp://botticelli.jp/

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